「この子のお父さんになりたい」そう言ってくれた日。

 私と彼は大学入学時からの友人。大学時代は互いに別の彼氏彼女もいて、一番近い友人でしかありませんでした。私は社会人になりすぐに妊娠をしてしまいました。父親になるはずの人は妊娠が判明すると連絡が途絶えましたが、私は授かった命を産む以外考えられませんでした。会社にも事情を伝えるととても快く迎え入れてくれました。大学から地元を離れ、私はその地域で就職をしました。里帰り出産をして、間もなく復職しましたが頼れる親族がおらず、唯一頼れたのがまだ就職留年で学生だった彼でした。引っ越しの手伝い、大きいものの買い出しなど、幼子を連れてはひとりで出来ないことも沢山手伝ってくれました。就活がうまくいかずに彼女に別れを告げられた彼は寂しさを紛らすためとよく息子の遊び相手をしてくれました。

 息子の1歳の誕生日。頼んでもいないのに彼はバイトの休みを取り、精一杯調べたらしい「ヨーグルトとパンのバースデーケーキ」を手づくりしてきてくれました。元来友人関係が長く続いており、異性として見たことがなかった相手。異性としては見てなかったのに、なんだか「この子の父親がこうゆう人だと息子も楽しいだろうな」と思うようになりました。ただ、長いこと友人だったし私はいわばシングルマザーなので、友人としてしかいられないだろうと割りきっていました。

 彼が就活をするにあたり、いろいろと悩んでいるようだったので仕事のツテで近場の仕事を紹介し、「ずっと息子の遊び相手してあげてよ(笑)」なんて言ったりしていました。すると彼が「俺はこの子のお父さんにだったらなりたいなって思うよ」と。そこからお付き合いすることになりましたが、付き合うというよりも正式な家族になるための準備みたいな感じでした。籍を入れる日もあらかた目処がついていたので、それに向けて動いているようなものでした。

 付き合って1年。彼が家に戻ってくると、息子を連れて部屋の外へ。部屋に戻ってきた息子の手には、息子と同じくらいの大きさの花束。「俺はこの子のお父さんになりたいと言ったけど、お前を支えたいと思ったからやけんね。ちゃんと言えてなかったけど、結婚してください」ニコニコの息子が私と彼の手を引っ張り、ギューっとしてくれました。私と彼も、息子をギュっと抱き締めました。息子がいなければ、きっと結婚することはなかっただろうと思います。

こここみやさん (20代・女性)

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