変わりつつある思い出の街で伝えた、変わった気持ち。

 付き合った当初から、ふたりでたくさん歩いてきたみなとみらい。ふたりは、同棲しはじめたタイミングから2年ほど横浜を離れて暮らしていました。みなとみらいに訪れる機会も減っていた頃、「久々に行ってみよう」と僕は彼女を連れ出しました。

 訪れてみると懐かしさと新しさを感じました。「2年も来ていないといろいろ変わっちゃうんだね」彼女が少し寂しそうに話しているのが印象的でした。仕事終わりに待ち合わせし、夕日も沈み、観覧車の明かりが目立ち始めた頃、一番最初にデートでご飯を食べに行ったお店で夕食。ふたりにとっては特別なお店です。「ちょっと歩こうか」夕食を終え、付き合い始めの頃よく歩いていた道を、思い出をなぞるように歩き、3年前の話を少しずつしました。「ここでずっと船見ていたよね」「万葉倶楽部も行ったよね」「昔はここには何も無かったよね」「冬でもここは寒くなくていいよね」ふたりの出身地である横浜。よくデートをしたみなとみらい。今はだいぶ景色が変わってしまっていました。それでも、いつものコースを歩きながらもう夜もふけた頃に港の見える丘公園へ向かいました。

 3月7日の23時45分。ふたりの4年目が始まろうとしていました。僕は工場の夜景を見ながら話しはじめました。「あのクルクル(工場地帯で動いている大きな風車の様な建造物)今日も動いてるね」そう言うと「そうだね」と相槌を打つ彼女。3年前と変わらない会話。でも変わっていくものもあります。「3年も経つといろいろ変わってるもんだね、あった建物がなくなっていたり、新しい建物ができたり」「うん」と少し寂しそうな彼女の返事。僕は話を切り出します。「実はオレの気持ちも変わってきた......」「え......、それってどういう事......?」彼女はふと僕の顔を見上げ、僕もその目を見ました。

 時間は3月8日の午前0時。「もう好きでいるのはやめます。これからは愛し続けます」ポケットにある指輪を出しながら片膝をつきました。見上げると彼女の目には大粒の涙が溢れていました。切れる息の中で彼女が懸命に第一声を振り絞り「この指輪入る~~??」僕は笑いました。YesでもNoでも無く差し出した指輪が自分に入るかどうかを聞いてきたからです。「ちゃんと入るように作ってあるよ」そう言いながら指輪をはめました。「フラれるかと思った......」安堵と感動の涙でした。

 その後、結局僕は「Yes」の回答は聞いていません。けれどそんな彼女を僕は愛しています。そしてこれからもずっと愛し続けていきます。

ひろきんぐさん (20代・男性)

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