知ってるくせに、私がずっと待っていたこと。

度々「ご関係は?」と聞かれる年上の彼と私は ひとまわり離れた12歳差。スーツを着ると年齢以上に落ち着いて見える彼。それとは逆に年齢よりも幼く見られてしまう私。まさかぱっと見て付き合っているとは思えないようで「ご親戚ですか?」なんて言われたことも。

 それでも同棲して約1年、一緒にいるとお互い似てくるのか、彼のとなりに居るのが当たり前になってきた頃熊本地震がおきました。1回目、2回目ともに唸るような音と同時に 大きく突き上げられて......、だけど よく覚えてなくて。ただ、怖かった。「死ぬのかもしれない」と思いました。なかなかおさまらない揺れの中、彼は必死に揺れに耐え、私を守るように覆い被さったまま「愛してるよ」と強く言ってくれました。いつもは仕事が忙しく出張ばかりの彼なのに、あの日あの時は2回とも一緒だったことを「この子を守りなさいってことだったんだよ」と彼は言い、そして「あの『愛してる』は、死ぬことを覚悟した瞬間とっさに出たんだ」と後から教えてくれました。マンションだったこともあり、大きな横揺れで家具や家電、ドアまでもが倒れ、よけることなんて出来ませんでした。改めて思うと、奇跡のようなかたちで無事だったんだなと。助かった人はみんなそうだったんだと思います。たくさんなくなりました。住む場所も、人も、大切な物も。

 家がだめになり、持病のある私は、それからしばらく彼を残して県外へ避難することになりましたた。生きててよかった。今はそれだけで充分感謝しないといけないのに、痛くて、怖くて、寂しくて、毎日泣いていました。

 あれから約2ヶ月。「新居の契約書を書きにいくから熊本においで」と彼からの連絡。うれしさと、安心した気持ちとで泣いて喜びました。やっと見つけた新しい家。そして待ちに待った日、同居者の記入欄がある。「おふたりのご関係は?」やっぱり聞かれます。「不釣り合い」って言われている気がして私はいつも少しうつむいてしまいます。「住む頃には夫婦です」彼が答えました。びっくりしすぎて言葉が出ません。「いいよね?」うつむいた私を覗き込む彼の顔がにやけています。知ってるくせに、私がずっと待っていたこと。年上の彼らしい、少し意地悪なサプライズでした。

梨さん (20代・女性)

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