美しいご来光に満たされ、思いやりのある言葉に感涙。
同じ会社で出会い、交際して数ヶ月で同棲をスタートした私たち。付き合い始めた当初は気持ちも盛り上がっていて「遠くないうちに結婚しよう」と言い合い、お互いの両親にも紹介を済ませていました。けれど、なかなか彼からプロポーズの言葉はもらえず、月日が経つにつれ、付き合いはじめの熱い想いは落ち着いてしまっていました。シャイな彼は、普段、私への気持ちもはっきりとは示しません。
30歳の節目の誕生日にも何もなく、彼が結婚したいと思ってくれているのかハッキリしないまま、交際期間も3年目に入ろうとしていました。そんな中で迎えた夏休み。私がずっと行ってみたいと思っていた、富士登山を決行することになりました。夕方から登山をはじめ、頂上で朝日を迎えるプランです。富士山が美しくていいなと憧れていて、いつか登りたいと思っていました。あまり体力に自信がない私は、初めての富士登山を不安に思いながらも、何度か登っている彼がペースづくりをしてくれたおかげで、何とか無事に頂上までたどり着きました。高山病にならないように深く呼吸をするように、呼吸が乱れてきたら、無理なく休憩をするようにと。
しばらくは頂上まで登りつめた達成感で笑顔もありましたが、夜通し歩いた疲労感もあり、ご来光を待つまでの一時間あまり彼との会話は少なく「寒いなぁ、眠いなぁ」という気持ちでいました。そして迎えたご来光の時。朝の光にだんだんと、空が明るく白くなってきました。富士山の頂上でむかえる朝日は本当に美しく、うすくたなびく雲の間から顔を出した太陽がキラキラして、素晴らしい眺めでした。それまでの疲労感を忘れ、感動や興奮や、そんな気持ちで満たされます。朝日が昇りきり、ご来光を見届けたタイミングで、彼がおもむろに切り出しました。「無事に富士山にも登れて、ご来光を拝めてめでたいし。我々もそろそろ籍を入れましょうか」突然のプロポーズでした。すぐには意味が理解できず、少し間をおいてから「はい、よろしくお願いします」と答え、泣きそうになるのをこらえました。
富士山の頂上にある郵便局から、その時の私の気持ちを文にして自分たち宛に送り、記念にとってあります。あまり自分の気持ちを言葉にしない彼ですが、登山の間のペースづくりにも、普段の生活の中の気づかいにも、思いやりを感じます。プロポーズの言葉も「結婚してください」ではなく、籍を一緒にして暮らしていく、という考え方が彼らしく、大事にしたいプロポーズの思い出です。
YUさん (30代・女性)
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