忘れられない悲しみの風景が世界一幸せな景色に。

 私には忘れられない景色があります。まだ10代の頃、初めて好きになった人と見た小さな菜の花畑。畑の隅に咲いている小さな空間だったのだけど、とてもきれいで優しくて温かくて、そして隣には大好きな人がいて、傷つくことも知らない無垢な私は、その景色が世界一幸せな景色だと思いました。その後初めて失恋の痛みを知り、誰かを好きになる度に、その菜の花畑の景色を思い出しては苦しくなって、踏み込めずに居ました。未練があるのではなく、傷つくことなく真っ白な心で見れていたあの景色が、悲しい思い出になったことがとにかく辛かったのです。こんなに辛い思いをするなら、あの時消えちゃいたかったと思うほど、私にとって一番きれいで一番悲しい景色となっていました。

 それから社会人になり、主人に出会いました。ひと目見た時にすぅーっと吸い込まれるような、その瞬間から気になる存在となりました。初めてふたりで食事をした時は、大好きな家族の話で何時間も盛り上がって、ふたりでいると経験したことがないくらい穏やかで楽しい時間を過ごせ、心の底から恋愛を楽しみ、幸せを感じるようになりました。主人と出会った時から、過去とは決別出来ていたけれど、ある日、菜の花畑の話をしたことがありました。「いつも恋愛をしようとしても その景色が浮かんで辛くなる」過去の話、嫌だったかな......、と心配しましたが彼は最後まで真剣に聞いてくれました。

 ある日、仕事終わりに車で迎えに来てくれてそのままサプライズの旅行へ。旅行を楽しみ、帰り道「ちょっと寄りたいところあるから、一緒に行ってくれる?」と連れて行かれたのは350万本見渡す限りの菜の花畑。「あやの大切だけど悲しい 大好きな思い出を、世界一幸せな景色に変えてあげたかった」そう話してくれ「あなたのこともあなたの大好きな家族のことも必ず幸せにします! 結婚してください」とプロポーズの言葉とともに、菜の花畑の真ん中で夢に見ていた婚約指輪を渡してくれました。主人のおかげでその忘れられない景色が世界一幸せな景色となりました。自分のことより私の幸せを一番に考えてくれる主人の優しさに救われ、過去は消すのではなく 後悔ではなく過去があるから今があることを知りました。主人が私の過去を肯定し、受け止めてくれたおかげで私は過去に感謝し、そのプロポーズをきっかけに全てを乗り越えられることができたのです。

 それから毎年思い出の菜の花畑に一緒に行っています。過去を乗り越え、ひとりではなくふたりで新たに歩み始めた人生。結婚してからも毎日本当に主人の優しさ、心の美しさに感動し、あの日あんな幸せな人生のスタートを切れたことが私にとって最良の選択だったと感謝しきれません。来年は家族3人で、これからおじいちゃん、おばあちゃんになっても毎年同じ菜の花畑で世界一大好きな主人と一緒に年を重ねたいと思います。

choconcoさん (20代・女性)

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