ちょっとやりすぎ!? 絶対にほかにはない最良の日。

年の瀬も押し迫った12月28日。「少し遅くなったけれどクリスマスディナーを用意したよ」。そんな説明で横浜マリンタワー併設のレストランに彼女を連れ出しました。生粋の横浜育ちの彼女にしてみれば、横浜マリンタワーでの食事は子どもの頃から慣れ親しんだものだったのかもしれません。特に怪しんだ様子はありませんでした。

 デザートも食べ終わってしばらくすると、スタッフが近づいてきます。「お客様。もしよろしければ、これから展望室の夜景をご覧になってはいかがでしょうか。営業は終了していますが、本日は特別にご案内できます」戸惑っている彼女を横目に、私が「本当に良いんですか? では、是非」と快諾すると、エレベータに案内されて、あっという間に地上94メートルの展望室に到着します。

 マリンタワーの屋上は360度ぐるりとガラスで囲まれたドーナツ型の展望室になっています。ふたりきりの空間をできるだけゆっくりと歩きます。2層に分かれている展望室の下層階に降りる階段にさしかかると、そこはオレンジ色のキャンドルライトの光でゆらゆらと照らされていました。私が手を引きながら降りていくと、ふたりの思い出のBGMが流れ始めます。階段を降りた先には、みなとみらいの華やかな夜景が広がり、観覧車が虹色の花を咲かせています。夜景に見とれている彼女の側からそっと離れて、深紅のバラの花束をこっそりと物陰から取り出します。 レストランスタッフにお願いして事前に隠しておいたものです。BGMがサビに入るころを見計らって彼女の名前を肩越しに呼びました。ゆっくり振り返った彼女の鼻先に、ずっしりとひどく重量のある花束を差し出して、「Will you marry me?」意を決して愛を伝えます。きっと二つ返事で快諾してもらえるに違いないと思いながら。

 「――――――えっ、なにこれ!? はぁ?!」視界を埋め尽くす無数のバラの花弁に驚く彼女。失策でした。驚かせようとする余り、やり過ぎたのです。プロポーズの言葉より、目の前の花束が強烈すぎました。「なにって、プロポーズのバラの花束だよ」「でかっ! 何本あるのこれ!?」「108本。いや、そうではなく! 俺と結婚してください」「108本!? うん? 結婚? はい。よろこんで! わー、すごいなー、わー」 想像していた美しいプロポーズの光景はどこかに飛んで行ってしまいましたが、返事はもらえたので良しとします。そのあと彼女が大笑いし始めたのは、花束が一抱えにできないくらい巨大だったからでしょう。

 用意した紅いバラは108本。普通ならせいぜい30本程度です。横浜マリンタワー貸し切りだけでもちょっとやり過ぎかもしれませんが、海外では108本の紅いバラには「結婚してください」の意味があると聞いて、「どうせやるなら一生忘れられない思い出にしてやる」と何軒もの花屋に断られながら一苦労して用意した花束です。横浜マリンタワーでも「この本数は前例がない」と言われたほどです。彼女は花束の重さに文句を言いながらも、そのあとは終始ご機嫌でした。ふたりで総重量6.6kgの花束を抱えて帰途につきました。道中でつかまえたタクシーの運転手に不思議な顔をされたのも良い思い出です。「これ、重いよ」「俺の愛の重さを思い知れ」「なんだそれ」「はっはっは」やりすぎて少しばかり笑い話になってしまいましたが、どんなプロポーズとも内容がかぶったりしない。そう自信を持って断言できるサプライズプロポーズでした。

つうざんさん (20代・男性)

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